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初老期から老年期にかけては、うつ病になりやすい因子が増えてくる時期で、この時期に初めてうつ病になる人も少なくないのです。その原因として考えられるのが、まず、様々な身体疾患にかかりやすくそれが慢性化しやすいということです。このため、身体疾患に合併するうつ病にかかりやすくなります。特に、脳卒中が原因で、うつ状態になる人も多いのです。
それから、この時期には喪失体験が次々におこってくるということも原因としてあげられます。自分と同じ年代の身近な人が、次々と亡くなっていくということや自分自身も仕事や社会的な地位から退くことになったり、病気にかかって健康を失うということが喪失体験になるのです。このような喪失体験を、きっかけとしてうつ病にかかりやすくなります。
高齢者のうつ病の特徴としては、著しい抑うつ気分やおっくう感はなくても、生きがいや興味の消失、漠然とした不安感を主症状として訴えられる場合が多いことです。さらに、精神症状が目立たずに、不眠、倦怠感、食欲不振、めまいなどの身体症状ばかりが目立つというのも高齢者のうつ病の特徴です。ときに、「みんなが自分の悪口を言っている」というような被害妄想、または、その他の種類の妄想を伴うこともあります。さらには、不安感、焦燥感が極めて強くて、片時もじっとしていられなかったり、興奮状態になってしまうタイプのうつ病になることもあります。
高齢者のうつ病で、注意すべきは痴呆症との区別や痴呆症とうつ病の合併です。「一日中、ボーッとしている」、「動作や反応が鈍くなった」、「理解が悪く、受け答えもちぐはぐである」などということで、家族の方に痴呆症を疑われて、病院や医院に連れてこられることがあります。
しかし、ていねいに診察してみますと、痴呆はあったとしても軽度であり、むしろうつ病による症状が主であると考えられる場合がよくあります。事実、抗うつ剤で治療しますと、活気を取り戻し、笑顔がみられ、動作、反応が速やかになったりしますので、今までうつ病にかかっていてそれが改善したということがわかります。しかし、うつ病が存在しても、痴呆症もかなりの程度であって無視できない場合も少なくありません。
いずれにしても、うつに対する適切な治療は重要です。うつが原因で、世の中のことに興味を失ったり、不眠のために生活のリズムが狂ってしまったり、あるいは、食欲不振のために栄養状態が悪くなるといったことは、痴呆の原因となったり、すでにある痴呆をさらに悪化させることになるからです。

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