強迫性障害とは、強迫観念や強迫行為があり、それに強い不安や苦痛を感じたり、そのことにとらわれて多くの時間を費やすために、日常生活や社会生活が障害された状態をいいます。強迫観念とは、不合理的と本人も思っているのに、意志に逆らって侵入してくる考えやイメージのことです。強迫行為とは駆りたてられるように感じられながら繰り返し行なわれるような行為のことで、強迫観念による苦痛や不安を軽減する、あるいは回避する目的で行なわれます。
| よく見られる強迫観念や強迫行為 |
| ・不潔ということに過度にとらわれて心配する。例えば、公衆電話や電車のつり革を使わないようにしている。あるいは、尿や大便に関して過度な心配や嫌悪を感じている |
| ・自分や他人を傷つけてしまうかもしれないという恐れをもっている |
| ・いやな考えにとらわれて、それからなかなか離れられない |
| ・ドアの鍵やガスの元栓、水道の蛇口を閉めたかどうか、何回も確認する |
| ・左右の対称性や順序にとらわれて、物事がなかなかはかどらない |
| ・何度も手洗いや掃除をする |
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例えば、書類や帳簿を何回も確認して、ミスを侵さないようにするということは誰にでもあることです。このようなことが若干いきすぎると強迫的傾向ということになりますが、何度も確認して確かな仕事をすることは大切なので、現代社会にうまく適応するためにはむしろ有効である場合が多いといえます。
また、とりわけ、思春期、青年期には、強迫的心性をとりやすいといわれています。この時期は、自我意識が高まったり、性的衝動が現れたりするために、学童期とは比較にならないような複雑で危機的な状況に陥り、様々な困難な課題に対処していかなければならなくなります。そのために、潔癖性、完全主義や知性化(生々しい欲動や感情を論理的な思考や知識に置き換えること)といった強迫的な防衛スタイルを総動員して安全性を確保しようとします。
このような強迫的傾向、強迫性スタイルと強迫性障害とは全く別のものです。強迫的傾向は、獲得された性格傾向あるいは防衛スタイルですが、強迫性障害は後に述べるような脳の機能性障害がその原因として考えられています。
強迫性障害にかかる人の割合は、人口の2〜3%といわれています。従来、強迫性障害は心理的原因で起こる代表的な病気と考えられていましたが、現在では脳の機能障害が原因と考えられています。とりわけ、セロトニンという神経伝達物質の脳内での調節障害が有力視されていました。しかし、セロトニンの調節障害を改善する働きがあるセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を使用しても、強迫性障害の40〜60%は改善しないことや、SSRIのみでは改善しない場合でも他の薬物との併用で改善が認められる場合があることなどから、セロトニン以外の複数の脳内神経伝達物質が強迫性障害にかかわっていると考えられるようになってきています。
強迫性障害の治療では、セロトニン作動性神経系の障害を改善する効果を持つクロイミプラミンやセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)をまず使用します。しかし、その場合の改善率は、先ほど述べたように40〜60%と決して高くはありません。単独では改善しないときは、クロイミプラミンとSSRIの併用やそれらと抗精神薬やクロナゼパムなどとの併用が行なわれます。
薬物の効果発現までには、少なくとも6〜8週間かかりますので、焦らずに薬物の服用を継続することが大切です。また、薬物治療で効果が見られた場合でも、早期に中断すると症状の再燃が多いので、1〜2年程度、薬物治療を継続する必要があります。

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