実は、うつ病は稀な心の病気?

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双極性障害

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 うつ病が最も多い「心の病気」というのが常識になっているようですが、私にはこれは固定観念としか思えません。
 私が、最も多い(ADHDを除いて、少なくとも当院でダントツに多くみられる)のは、軽い躁状態ともいえない普通程度の気分とうつ状態とを、不規則に短期間のうちに反復している気分障害の一種です。私は、これは双極性障害の仲間であると考えています。すなわち、図(1)の短い不規則な気分の起伏をもつ双極性障害です。

実は、うつ病は稀な心の病気?図表

 私は、双極性障害とは、(1)短い不規則な気分の起伏をもつ双極性障害と、(2)周期的な気分の起伏を持つ双極性障害とに、明確に大別されると考えています。

 このうち、圧倒的に多く、かつうつ病と極めて誤診されやすいのは、やはり前述の(1)短い不規則な気分の起伏をもつ双極性障害です。

 双極性障害は、以前は躁うつ病と言われていましたので、一般の精神科医は、明確な躁状態がないとそのように診断できないと思い込んでいます。これこそは、まさに固定観念そのものだと思うのです。

 このタイプの双極性障害は、うつ病と同様にうつ状態がメインの症状なので区別が困難となっているのです。それゆえに、その存在が未だに十分に認識されておらす、うつ病とほとんどが誤診されているのが現状です。

 しかし、よく見れば、うつ病との違いは歴然としています。このタイプの双極性障害は、明確な軽いそう状態が認めらえることもありますが、たいていは普通程度の気分とうつ状態を一日か数時間程度の短い期間で不規則に反復しています。些細なことをきっかけに急速に気分が沈むことがよくあるというのも、たいていはこのタイプです。

 うつ病では、このような短期間では決して一時的に普通の気分に戻ったり、また悪くなったりするような気分の波は決して なく、治療しなければ低空飛行のままなので、違いは歴然としています。

 重要なのはこのケースは、うつ病の治療で決してよくならず、双極性障害としての治療によってのみ改善と安定がみられることを私は常に確認していますから、治療結果からも、双極性障害と結論づけるより他はないと考えます。

 このケースでも、仕事を休んで休養すれば、間違ってうつ病の治療をしていてもストレスが減って症状は一時的に改善するので、医師も患者さんも薬が効いたと勘違いしがちです。しかし、復職してストレスがかかれば、容易に症状は悪化して再び休職においこまれてしまいます。このようにして、休職と復職を繰り返している人が実に多いのです。本当の安定は、双極性障害の治療を行わなければ得られません。

 また、一般の精神科医もうつ病と診断しながら、うつ病とは何の関係もないドグマチール(別名、アビリット、ベタマック、スルピリド)を使っていることが、実に多いのです。
 彼らも、多くの患者さんが、うつ状態がメインの症状でも、たいていは、抗うつ薬だけでは効かないことが多いことを、うすうすは感じているので苦し紛れに、ドグマチールというごまかしの処方をしていると私は思うのです。しかしこれらの場合、正しい双極性障害の治療をすればすべてはよくなってしまうから、間違った解釈であることは明らかです。

 さらに、このタイプの双極性障害の看過できない重要性は、うつ病という間違った治療をして気分の起伏を止めなければ、大抵は早晩、うつ状態が前景にたってくる傾向があるということです 「図のb」。

 こうして、無策なまま経過すれば、労働や家事が不能になったり、最悪の場合、日常のごく普通の生活すらままならない方も多く見てきました。事実、他院から移られて、此処までひどくなった方の治療も私はしています。さすがに、ここまで悪化してしまえば短期間で劇的な改善は望めませんが、正しい双極性障害としての治療をすれば少しずつでありますが必ず改善はしていきます。
 また、ここまで悪化してしまえば、遡って気分の起伏の有無を調べないかぎりは、どのような精神科医に診てもらっても、100%うつ病と誤診されてしまいます。
 このタイプの双極性障害を、きちんと診断して診療していれば、うつ病とは実のところは、稀な「心の病気」であることに気がつくはずです。世の精神科医がこの双極性障害の存在に気が付かず、病気をこじらせてしまいますので、うつ病の治療が難しく感じられているだけだと私は思います。

 次に図の(2)周期的な気分の起伏を持つ双極性障害について、説明します。

 a は、長い期間(一ヶ月程度から一年ぐらいまで)うつ状態が続くことを周期的に繰り返していて、よく聞けばかなり活動的な時期(躁状態)もそれぐらいの期間持続し、かつうつ状態と交互に反復しているケースです。

 患者さんが受診されるのは、必ずうつ状態のときですからこのパターンを十分に念頭に置いていないと、うつ病とすぐに誤診します。
 さらに、このような周期が初回の場合、すなわちb のケースもあるわけですから、細心の注意が必要なのです。真の精神科医は、このケースでも初診で見抜く力量がなければなりません。
 まともな、うつ病の治療をしていて一ヶ月たっても少しの改善もなければ、うつ病という診断は間違っていると考えるべきと私は思います。
 最後に、c のケースです。これもよく見られます。明確な周期がありますが、2,3日から1週間と短いため、(1)-a との鑑別が必要です。なぜなら、治療が異なるからです。また、これもうつ病ときわめて誤診されやすいのです。このケースでは、長年、誤診のまま放置されていてもさほど悪化することなく、初歩的な双極性障害の治療によってあっけない程の改善が、たった一回の治療でもみられることが多くあります。

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