双極性障害の診療風景(私の診断室からパート1)

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双極性障害

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1.仕事の意欲の低下を、主たる悩みとして、いろいろな精神科を受診され、よくならず、当院を受診された中年男性。

気分はいかがですか?

頭がふらふらする。気分も憂鬱です。-----夕方ひどくなります。

 この時点で双極性障害であることは既に、確定。うつ病の「日内変動」とはまったく逆のパターンであるから。以下は、双極性障害の種類を鑑別しているにすぎない。

気分は、日によって違いがありますか?

最近はずっと悪いままです。

休日はどうですか?

体を動かせなくなるぐらいです。(注:短い不規則な気分の起伏がないことを確かめている)

~ 途中 略 ~

同伴者: すぐにイライラして怒るので、こちらが喋れなくなるほどの時期が、去年ありました。(躁状態!)

どれぐらい続いたの

2、3ヶ月です。(注:長い周期の躁うつの気分の起伏を発見、診断確定)

それからどうなったの?

同伴者: それから、本来の優しいパパにもどってしばらくして、急に元気がなくなり、弱気になり仕事に行くのも嫌だと言い出しました。(うつ状態にはいった)

以下、略。

【診 断】 長い周期性の気分の起伏を伴う双極性障害
【結 果】 2週間後に改善を確認

 少し話を聞けば明確なそう状態が持続していた時期があったことはすぐにわかる。精神科治療の初心者レベル。

2.女性、医大(教授が主治医)に通院しているが、うつ状態が一向によくならない。休職を繰り返している。死にたくなることもしばしば。現在も休職中。

うつ状態と言われるけど、僕にはむしろ少しテンションが高いように思えますよ?
〈実際に勢いよく、一方的に喋り続けている。とても、うつ状態には見えない)

でも、家に帰ると気分が急に沈んで、何も面白くなくて死んでしまいたくなるのです。

 すでに、この時点で短い不規則な気分の変化が存在することは明瞭!
 多弁な状態、つまり軽いそう状態から、家に帰ると急激に気分が落ち込んで死にたくなるようなうつ状態に移行するというのは、異常な気分の落差である。この様な気分の起伏を繰り返して、この患者さんは不安定になっていると考えられる。うつ病では、この様な症状は絶対にみられない。
 よって、私の頭の中では、短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害との診断は確定ずみ。
 以下は、患者さんの悩みを聞いて共有している簡易精神療法、診断が確定したからと言ってここで終わるわけにはいかない。この様な患者さんは、口先で自殺したいと言っているのではない。下手な治療では、本当に自殺されてしまう!

~ 途中 略 ~

私は、人と会うとよく喋るのです。

~ 途中 略 ~

医大ではなんと言われているの?

うつ状態だけどうつ病ではないと言われています。

そんな診断はないけど、薬歴を見せてください。------これは、うつ病の治療薬そのものですよ。

~ 途中 略 ~

あなたは人と会っているときは、無理やりにテンションを上げているけど、家に帰って一人ぼっちになると急に気分が沈んでしまうのですよ。-----つまり、気分の落差が顕著でそれを繰りかえしているから、双極性障害ですよ。

以下、略。

【診 断】 短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害
【結 果】 2週間後に改善を確認。すでに、自宅に戻った途端に死にたくなるような気分の急速な落ち込みはなくなっている。しかし、未だ、抑うつ気分が全体を覆っている。治療の本番はこれからである。仕事に復帰して安定を得られるような状態に早くしていかないと、孤独感から自殺する恐れは依然としてあると考えられる

 失礼ながら、この医大の能力では、この方の診断、治療は無理。このまま無策にしていれば、自殺のおそれ多いにあり。

3.親の介護などで、不安が強くなって、精神安定剤ではコントロールできず、近医(内科)から紹介。

介護に疲れたの?少しおっくう?

そうです。そうでなかったり、急に食事の支度がいやになったりします。

一日のうちでもよくなったり、悪くなったり?

波があります。

気分のいい日と悪い日もありますか?

あります。--------友人と話していると元気になります。

【診 断】 短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害
【結 果】 2週間後に、改善を確認する

 前景に立っている症状すなわち不安だけでなく、背景にある気分の異常に注意すれば、診断は容易。

4.仕事で過労状態となり、周囲の支援を得られぬまま、重度のうつ状態に陥り、精神科を受診したがうつ病と診断され、即、実家に戻り休養し治療を受けるよう指示されて当院を受診。若い男性。

夜遅くまで働いて、何から手をつけていいのかすら、分からなくなった。上司に助けを求めたが、ダメだった。仲間といると大丈夫だが、夜遅くなって一人になって考えこんだりすると、急に気分が沈んでしまいます(気分の起伏はありそうである)。病院にいったらすぐに、休職しなさいといわれました。

朝の気分はどう?

すごく憂鬱で、つらいです。

夕方になるとましになる?

夕方も、そんなにかわりないです。休みになると落ち着きます。

休みにはいると、気分がスーッと楽になる?

友達と遊びにいくと楽になりました。

日によって、気分が変わったりしますか?

最近は、ずっと憂鬱でした。

それまでは、どう?だんだん、しんどくなったの?

そうです。
もともと、仕事はうまくいかなかった(ADHDの可能性)が、人が抜けて余計にしんどくなりました。
~ 途中 略 ~
どういう順序でやったらいいのか分からず(ADHDの可能性)、深夜までしていました。
~ 途中 略 ~
3ヶ月前から、ずっと沈んだままになりました。休みになると、気分があがるぐらいです。

もともと、ミスが多いほう?

多いかもしれません。

以下、略。 (国際診断基準DSMに基づいて、中等度以上のADHDの存在を確認する)

ところで、以前から気分の浮き沈みがあったのではないの?

入社して、5年目になりますが、確かに2年目、3年目はありました。

どんな感じ?気分がよい日と悪い日があったのではないの?

ハイ。

ちょっとしたトラブルで急に気分が沈むようなこともあったのでは?

ハイ。そうです。

休日になると、急に気分が楽になりませんでしたか?

ハイ。

以下、略。休養してからの状況を聞いている。

 双極性生涯の診療風景(私の診断室からパート1)図表

【診 断】 ADHD、短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害
 紹介状をみると、前医は真面目で丁寧な診療をしており、実に誠実な人柄を感じさせられる。しかし、このまま、うつ病の治療を継続しても、休息によって症状は一時的に改善して、時間が経てば復職も可能になるでしょうが、復職して同じようなストレスがかかれば、必ず症状は再び悪化して、再度の休職に追い込まれてしまうのは確実です。
 誠実さすら欠いており、ずぼらで無責任な精神科医が圧倒的に多いのが現状なので、これ以上のコメントは控えさせていただきましょう。

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