双極性障害の診療風景(私の診断室からパート2)

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双極性障害

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1.10年以上、主として喉の閉塞感を和らげるため、毎日、精神安定剤のみを使用して乗り切っていたが、大きなストレスを伴う出来事が重なり、一気に体調をくずし、不安も強くなって当院を受診した女性。

どうされましたか?


趣味は、いろいろあってやっていますが、家に帰ると途端に不安が強くなります。
根がいる趣味はつかれて、明くる日も起きられなくなるのでやめました。

(すでに、気分の起伏があることは明瞭であるが、)不安になることや、お疲れになることがあるとのことですが、気分はどうですか?

やはり、不安と同時に気分もゆううつになります。

あなたは、以前から、気分の起伏に伴う不安や身体症状(喉の閉塞感など)があったのですが、精神安定剤を使って、それを緩和してなんとか乗り切ってこられたのです。
しかし、今回大きなストレスが重なって、気分の起伏が強くなって精神安定剤では、隠しきれなくなったので、急に不調になったのですよ。
しばらく、双極性障害としての治療をすれば直ぐに元に戻られますよ。

【診 断】 短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害(平時は精神安定剤の使用のみでコントロール可能、
誤診され易いが
不安障害身体表現性障害ではない。)
【結 果】 改善

2.老年期の女性

憂鬱と不安でたまりません。他の心療内科に行きましたが、お薬を変えたのによくならないと言われても知らんと叱られました。それで、怖くなってこちらに来ました。

きっと、先生もストレスが溜まっておられたのですよ。ところでいつから不調になられましたか?

足を骨折して、それから入院して、急になりました。

この時点で、双極性障害との診断は確定。なぜなら、気分障害はあるのは明らかであるが、うつ病では急に気分が落ち込むことはないため

それでは、今は気分に波はありませんか?

いえ、波はありません。ずっと憂鬱です。

骨折して、入院するまではどうでしたか?波はありませんでしたか?良い日と悪い日がありませんでしたか?

そういえば、気分が良いなと思ったら、次の日は気分が悪かったです。朝よくても、昼頃、急に気分が沈みました。

同伴している夫もうなずいている。
5日後に来院されて、

まだよくなりませんが、本当によくなりますか?

必ずよくなります。保証します。これから、2,3日ぐらいでよくなってきますから、一週間後に来てください。

 双極性生涯の診療風景(私の診断室からパート2)図表

(一週間後)確かに、先生の言われるとおり、すっかり良くなりました。

【診 断】 短い不規則な気分の起伏を伴う双極性障害

3.2,3月前から、仕事への意欲がわかず、他院でうつ病としての治療を受けているが、改善せず当院を受診。男性。

略(状況を聞いている)

ところで、気分は下がりっぱなしですか?

良かった頃と比べると、気分は下がったままです。足元もフラフラします。

気分は急に下がりましたか?徐々に下がりましたか?

6月ぐらいから、下がりだしました。

それ以前は、何ともなかったですか?

そうです。よく、仕事ができました。

略(どうも活発に仕事をしていた時期があった様子)

いつぐらいから、活発になったの?

去年の12月ぐらいから、活発になったと思います。

それ以前はどうでしたか?過去にもそういう時期はなかったですか?

ありませんでした。活発でもなく普通ぐらいでした。

【診 断】 長い周期性の気分の起伏を伴う双極性障害(初回の躁鬱の周期)
【結 果】 (2週間後) 最近は、極端にやる気がないことはなくなりました。

4.仕事への意欲の低下、抑うつ気分を訴える男性。

いつから、気分は下がりましたか?

2か月ぐらい前からです。

気分は、急に下がりましたか?徐々にですか?

徐々に下がっていったと思います。

それでは、過去にもそのようなことはありましたか?

10年ぐらい前にもそういうことが、ありました。

それは、どれぐらい続きましたか?

半年ぐらいでした。休職して、治療をうけて改善しました。--------

それでは、その後から今回の気分が低下した間に、気分の波はなかったですか?

なかったと思います。

【診 断】 長い周期性の気分の起伏を伴う双極性障害の疑い
 本人の弁では、自分のことは案外、わからず自覚していないことも多い、明確なそう状態がみられず、うつ状態が今回で2回目ということであるが、半年も休職すれば、治療を受けずとも改善する可能性は十分にあったと考えられる。
 むしろ、自然寛解であり、
うつ病としての治療を受けたが、それには反応していなかったと考えられる
 (もし、うつ病としての治療が有効であったなら、もっと早く症状は改善していたはず。)

 よって、うつ病より双極性障害の可能性が高いと考え、双極性障害としての治療を開始して経過をみる

(2週間後) 気分はかなりよくなりましたが、まだ、意欲はわいてきません。(診断確定)

 治療の本番は、これからです。

 これは、自分から言うのは気恥ずかしいが、高度な観察力を必要とする例。このレベルが速やかに診断・治療できて、はじめて一人前の精神科医といえる。しかし、まごまごしていると、労働不能になったり、自殺されたりする。

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